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September 21, 2021
MarketsandMarkets による市場調査レポートが、2021/07 に公開されました。レポート本体は $5,650 からのエンタープライズ向けの価格設定ですので、当レポートの要約からポイントを抜き出してみます。
Graph Database の市場規模は、五年後に約 5 億ドルに達すると見込まれています。
他のホットな分野との市場規模を比べてみると、そこまで突出した額では無いものの、ある程度のマーケットが存在することを示唆しています。
主な成長理由として、以下の理由が挙げられています。
Emerging new use case and multiple usage of existing datasets are expected to act as the major driving factors for the growth of the market
Graph Database の適用事例というのは、AI ブームの勃興や IoT、フードデリバリー、サイバーセキュリティなど他の産業の発展により、適用される範囲が増えてきています。
それまでは単純に RDBMS で実装しても済んだシステムも、産業が振興し、コンピュータのハードウェアの性能も進化し、ユーザーもより多くを求めるようになった結果、グラフアルゴリズムを利用したアプリケーションに対して、リアルタイムに近いパフォーマンスを求めるようになってきています。
例えば、機械学習による EC サイトにおける商品推薦システムも、リアルタイムのユーザーの動向を要素に入れれば適合性の高い結果が得られるでしょう。
例えば、サーバーセキュリティにおける世界中の決済トランザクションをリアルタイムで監視すれば、より多くの不正決済を防ぐことができるでしょう。
例えば、フードデリバリーにおける特定地域の最短経路を検索する場合、リアルタイムで交通状況やユーザーのキャンセル情報を加味すれば、より精度の高い経路が提案できるでしょう。
パフォーマンスをより求めるようになった結果、従来の RDBMS をベースとしたグラフアルゴリズムの適用では限界が来るようになりました。大量のデータを教師データとして利用しはじめるようになった結果、グラフネイティブではないデータベースではそもそも結果を得られるまでに数十年かかるケースも出てきました。
そこで、グラフネイティブなデータベースが脚光を浴びてきたのでしょう。
大きな課題として、以下の点について触れられています。
Challenge: Lack of technical expertise
... Since the graph database concept is in its growing phase, the availability of skilled labor is limited, and this can act as a restraint for market growth. ...
グラフデータベースおよびそれを利用したアプリケーションの開発技能は、確かに RDBMS や他のシステムと比べると歴史が浅いでしょう。
したがって、結果としてグラフデータベースを採用すれば最適だったシステムも、実装者の経験やスキルセットを加味してより不適切なデータモデルを利用して実装されているケースもあるでしょう。
今後は、グラフデータベースを提供する各社が、サービスのみならず運用知見やユーザーへの教育にコストを割くことによって、市場全体の底上げをできるのではないでしょうか。
レポートの調査対象となった企業一覧はこちらです。
有名所としては、AWS は Amazon Neptune というマネージドな Graph Database を 2018/05 に発表していますし、Neo4j の他、Dgrpah や DataStax、 TigerGraph などは聞いた方もいるかもしれません。
最近だと、Neo4j が $325M (Series F) の資金調達を 2021/06 に実施 したり、TigerGraph が $105M (Series C) の資金調達を 2021/02 に実施 したりと、Graph Database を開発するスタートアップ各社の資金調達のニュースも入ってきています。
以上、MarketsandMarket のレポートの要約をかいつまんで、今後の Graph Database の市場展望について紹介してみました。