先日、私が以前働いていた会社で、100名(予定)を超える従業員を対象とするレイオフが行われる公式発表がありました。何人かの人とは既に連絡を取り合ったりできましたが、今回の件に関して思うところを書いておくのが一番効果的に伝えられる気がするので、一旦筆を取ってみようと思います。
私が住んでいるイギリスでも、北米に勝るとも劣らずレイオフが続く昨今。経済不況になる前は「レイオフされたら世の終わり」というような印象もありました。現地での同僚や友人がレイオフ対象者になる中で、考えさせられるところも多々ありました。
ですが、実際に自分の会社を含めて大規模レイオフがこうも続くと、冷静に事象として分析できるようになってきます。安い言葉で敢えて書くなら、(人によっては)「ピンチをチャンス」と捉える機会でもあるよ、自分を見つめ直す機会でもあるよ、と言うことです。
そこで、レイオフをそれなりに見聞きしている身として、この記事が前向きに捉えられるきっかけになればと思ったのが契機です。
レイオフのニュースを受けた時は、人にもよるでしょうが本当にショックでご飯が喉を通らない方もいるかもしれません。ですが、世の中にはみなさんの力を必要としている企業がきっといるはずです。
マクロ経済の観点から言えば、(慰めにならないかもしれませんが)優秀な人材が流動し知識を他社に共有していくことは、業界全体にとってはポジティブなこと。海外だと、レイオフ時のパッケージをもらってスタートアップを起業して新しい雇用を創出する、というケースもあります。ソフトウェアエンジニアが少ない業界から見れば、優秀な人材が来てくれるかもしれない、願ってもない機会です。
クックパッドは、私が 2017 年から 2021 年までソフトウェアエンジニアとして在籍した会社です。大変お世話になった同僚や元チームメンバーの方々が影響を受けることになりました。昨年も、ビジネス職や海外事業部での人員削減の発表はありましたが、今回に限っては日本のソフトウェアエンジニアも大きく影響を受けたということで、直接働いた同僚の内今までにない数の方々が転職活動を始めることになり、大変感じるところがあります。
まずは、今回の件に携わった人に共感の意を表明したいと思います。イギリスで働いていると、ビッグテックを中心にレイオフは日常茶飯事に起こります。M&A によるチーム整理、経済不況による収益改善、海外支社ごと人員整理。
レイオフされた人はもちろんですが、それまで一緒に働いていた同僚が急に離れていくのを見送りつつ、残ったシステムをより少ないメンバーで回さなくてはいけなくなったメンバーも大変です。残された人たちのオンコール体制が回らなくなり、ストレスやプレッシャーが増えて瓦解したチームの話も聞いたことがあります。自主都合による退職の場合であれば、知識を共有するためにオフボーディング期間が設けることもできるでしょう。ですが、大規模なレイオフとなると、なかなかオフボーディングがうまくいかないことも多いのではないでしょうか。
そして、レイオフを実施している経営陣にとっても簡単な決断ではありません。赤字採算の企業において人員削減により収益改善を見込むという行為は、経営的には至極合理的な判断であると言えるので、当事者にとっては残酷ですが、レイオフ後に企業の株価が上がることが往々にしてあります。自分が経営者の立場だったら同じ決断をしている人が多いでしょう。
レイオフが多い海外で働いてきた身として、お節介なところもあるかもしれませんが、思うところをいくつか書いていこうと思います。
前職の同僚は非常に優秀な方々ばかりですので、きっと Twitter で「転職活動始めます!」と書くと、大量に DM や返信、インタビューのお誘いが来るでしょう。
例えば、海外でビザが無いと在住できないような身でレイオフが起こると、「3ヶ月以内に再雇用先を見つけないと国外退去」というようなケースに陥ることがあります(それで実際に帰国した友人もいる)。もしくは、経済的な理由で早く転職先を見つけないといけない方もいるでしょう。
ただ、上記のような理由がなく、もし時間をかけて良いのなら、自分の考えや思い、転職時における希望はしっかりと考えてからインタビューに進むと良いかもしれません。特に初めての転職活動ですと、「あれ、自分って結構市場から評価されるんだな」と、あれよあれよとあっという間にオファーまで繋がって、断りづらいという状況に陥るかもしれません。
Greg McKeown の『エッセンシャル思考』でも、「ある決断に Yes ということは、他の決断全てに No ということである」(超意訳)という趣旨のことが書いてあります。勢いで転職してしまって後悔するより、採用する側にとっても Win-Win です(あくまで、時間をかけられる環境にあるなら、です)。
直接連絡が取れた方にはお伝えしていますが、もし必要があれば、推薦状を何枚でも書きますので、いつでも連絡してください。
現在の日本のソフトウェアエンジニアの転職市場でリファラルレターや推薦状がどこまで有効かはわかりませんが、どのようなプロジェクトで働いたか、どのような強みを持っているか、なぜ推薦するのか、というような PDF にして一枚か二枚くらいの文章であれば、いつでも責任を持って書きます。
嘘・誇張は避けたいので、基本的には同じチームまたはプロジェクトで働いた方のみ限定での対応とはなりますが、同じタイミングで在籍していれば、何かしらの形で関わっていたり評判を耳にしていたりしたはずなので、その形式でよければ書きますので相談してください。
最近は忙しくて知り合い以外からの依頼にはお断りしていたのですが、以前は海外転職活動のお手伝いをしていました。知り合いがメインでしたが、知人でない場合は有償責任で取り組んでいました。実際に何人かの方が現地でのオファーを掴むこともできました。その経験を活かすことができると思います。
但し、日本のスタートアップを受ける場合は、海外転職経験者としての観点でのアドバイスが不適切になる場合があるでしょう。基本は、外資や海外企業を受ける場合が良いかと思いますが、それでも良ければ声かけてください。
また、家庭や仕事の都合上、希望のスケジュール感で対応できない場合もあると思うのでその場合は申し訳ありません。ただ、私の周囲に、最近海外転職に成功して、「自分がお世話になったので今度は手伝う側に回ってみたい」というやる気ある仲間が何人かできてきたので、そういった方々に繋げることもできます。
現在僕が働いている会社や以前勤めた会社では、Hiring Freeze であったり Backfill での採用しかしていなかったりするので、直接リファラルすることは(執筆時点においては)できません。もし今後新しい Job Role が空いて、リファラルレターを書いて欲しいタイミングがあれば連絡してください。
また、ビザの専門家やエージェントでは無いので、「海外移住したいんですけど」というのはお手伝いできないかと思います。知り合いで詳しい人を紹介することならできます(地域は限る)。
レイオフ対象になってしまった同僚の方はもちろん、残った人も何らかの形で携わった方も、しばらく大変だと思いますが、できる範囲で応援しています。
また、今回のブログを公開するにあたって、事前にレビューしていただいた皆さん、本当にありがとうございました。センシティブな内容なので公開するまで直前まで迷いましたが、皆さんのレビューのおかげで公開しようと思いました。読者全員に伝えたい気持ちが正しく伝わらないかもしれませんが、届けたい人に正しく届きさえすれば、嬉しいです。