丁寧な暮らしを求めて

「丁寧な暮らし」とは何だろう。ふと、立ち止まって考えてみる。

壊れたものは修理して使う。一つ一つのものを大切にする。ご飯をゆっくり食べ、家族や友人との食事の時間を楽しむ。そんな、日々の積み重ねを愛おしむ生き方かもしれない。

では、丁寧の反対は何か。それを考えるために、Inversion Thinking で考えてみる。それは、「雑」。英語では Rough ともいえようか。

「雑」な生活とは、理由のない行動が増えた状態とも言える。

例えば、机の上に適当に積まれた物たち。なぜこれを買い、なぜここに置いてあるのか。理由がないまま、ものが増え、乱雑になっていく。一方で、そのものに「ときめく」や「有用だから」という理由があるなら、それは丁寧に扱われている証拠であり、丁寧な暮らしにつながるのではないだろうか。

片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんが提唱している片付けの手法の一つに「モノの定位置を決める」というものがある。家の鍵はここ、お気に入りの本はここ。いつも使うパソコンはここに、眺めて使うことが多い小さな植木鉢はあそこに。洋服ダンスの中に置いてさえ、Tシャツが自分の居場所を見つけている。それぞれのモノが、定位置という理由の中に、静かに佇んでいる状態。それは決して雑ではない。これも、丁寧な暮らしの一つの形だろうか。

それは、ただシンプルな暮らしを求めることではなく、一つ一つのものと、その思い出を大切にする生き方なのかもしれない。ミニマリストともチョッと違う。断捨離の末路というわけでもない。住む人の思い出と、迎え入れるお客への想いが交錯する、暖かい空間。

もちろん、子育てや仕事に追われ、常に完璧な「丁寧な暮らし」を維持するのは難しい。それでも、忙しい中で、小さな「丁寧」を意識するだけで、昨日よりも人生が少し豊かになるのかもしれない。

お気に入りの茶碗でお茶を飲む。壊れたボタンを縫い直す。お気に入りのペンで手紙を書く。

そんな、小さな「丁寧」を今日も大切にしてみたい。

2025-02-11