経済停滞が顕在化してきた 2022 年、名のあるテック企業大手のレイオフのニュースが市場を騒がしている。
レイオフの対象にされてしまった社員は、レイオフ通告があった直後に社用パソコンへのアクセスが禁止され、二ヶ月から三ヶ月弱の間に、次の雇用先を探さなくてはいけない。
レイオフの理由は往々にして、経済見通しとそれに伴う投資戦略やビジネス拡大戦略が大きく外れ、コストが嵩んでしまった場合だ。人的コストは積み重なると大きな金額になるので、不採算部門や不採算地域の従業員ごとレイオフを実施して経営を正常化しよう、というのが主目的だ。
例えば、1,500 万円の従業員を 200 人解雇すると、年間で 3 億円の金額を確保することができる。さらに、従業員を雇う間には、福利厚生や事務費など他にもコストがかかっているため、それ以上の金額になる。
さてここで、レイオフは本当に ”悪い" ことなのかを考えてみたい。
レイオフのニュースが出ると、Linkedin はレイオフされた人のメッセージで溢れ、株価が下がり、悲観的なムードで包まれる。Shopify では、レイオフニュースがあった直後で 14% も株価が下落した (source)。
レイオフの対象とされた人からすると、寝耳に水だ。いきなりそれまで一緒に働いていた上司から定型分の冷たいレイオフ通告が宣告され、その後すぐにパソコンへのアクセスが制限され、同僚と会話できなくなり、仕事探しをしなくてはならない。その間は給料が支払われるとはいえ、感じるストレスはこの上ないだろう。
しかし、経営目線で考えると、健全な経営状況に取り戻すための必要なコストカットだ。レイオフを避けようとした場合、人的コスト以外のところで工面しなければならない。それによって、一人当たりに投資される設備投資が削減し、労働環境は悪化し、福利厚生も減らされ、結果としてより多くの従業員の満足度が下がるかもしれない。それは果たして本当にレイオフを実現するよりも"良い"ことなのだろうか。
"良い"/"悪い" は主観的な指標であり、一つのレイオフをとっても、二項対立で断じることはできない。ただ一つ思うのは、レイオフを必要以上に悲観する必要は本当にあるのだろうか、ということだ。
他社にとっては、レイオフによって優秀な人材が一気に労働市場に出ることで、転職市場の流動性が高まり、その会社のノウハウやスキルが他の成長中の企業に転嫁することができる。また、レイオフを実施した企業は不採算体制から脱却し、より持続可能な経営戦略のもとさらなる企業価値を創出できるかもしれない。そうして経済全体が底上げされるシナリオだって考えられるだろう。
ネガティブなニュースが起こった時こそチャンスがあり、考えるべき思考の気づきがあり、克服すべき課題が生まれるのだろう。ぜひ多面的にニュースを捉えていきたい。