Podcast - My Mindset For Recording with Guests

ゲストの方をお呼びして Podcast を収録するときに、最近心掛けていることを言語化してみる。

質問のコンテキストを伝える

ゲストの方のキャリアや考えを深掘りしていくために、タイミングを見計らって Good questions を投げかける必要がある。この時に何よりも心掛けているのは、質問のコンテキストを沿える、という点だ。

ただ質問を投げ置きするだけだと、どう答えたらいいか分からず迷わせてしまったり、全く方向性が違う答えが返ってきてしまったりする。ゲストを収録中に立ち往生させてしまうのは、失格だ。なぜその質問をしたのか、その質問の背景にはどのような意図があるのかを沿えることで、より深い応答をしてもらえることができる。

例えば、技術カンファレンスやミートアップで積極的に登壇されているゲストの方をお呼びしたとする。その時に、シンプルにこう聞くことはできる。

「登壇の時に何を気をつけているんですか?」

一方で、以下のように「どんな属性のリスナーを想像して話せばいいのか」「自分のどのような経験やスキルが求められているのか」というコンテキストを加えることで、より具体的な答えをしてもらえる、かもしれない。

「登壇の時に何を気を付けているんですか?...というのも、似たようなモチベーションで、たくさん登壇をこなさなくてはいけない人は多いと思います。そのような方に向けて、アドバイスという形で、何か工夫されている点があればぜひ教えてください。」

もちろん、あえてオープンクエスチョンの方が、思いもしない方向に話がいって、より面白くなる可能性も十分に秘めている。その塩梅は、難しい。

質問を考えてもらう時間を作る

質問をする際のテクニックになるのだが、ゲストにしっかりと考えてもらう時間を作ることも意識している。というのも、急にサプライズを与えてしまうような質問ばかりを投げかけてしまうと、心理的安全な収録ではなくなり、緊張感を無駄に高めてしまうことになる。

具体的には、以下のフォーマットで質問を投げかける。

「(質問内容)+(プラスアルファ)+(質問内容の繰り返し)」

例えば、

「どうしてそのタイミングで転職活動したんですか?」

という質問をいきなり投げかけるよりも、以下のような質問形式を取る。

「どうしてそのタイミングで転職活動したんですか?(質問内容)... 例えば、僕だったら同じようなタイミングだったら、現状の仕事が忙しくて転職活動する余裕もないと思うんですよね。(プラスアルファ:自分の考えを述べる)結構勇気ある決断だったと思います。...なのでその時に転職活動しようと思うに至った話にとても興味があります(質問内容の繰り返し)」

この「プラスアルファ」に入る点としては、以下の項目がある。

  • 自分の考えを述べる(先に自分の考えを述べることで、それをベースに比較したり、賛成・反対したりしてもらうことができる)
  • 質問のコンテキスト(なぜ?誰に?どんなふうに答えれば良いか。すでに前述した通り)
  • 他のホストに同じ質問をする(ホスト複数体制で収録しているときは、先にもう一人のホストに同じ質問を振ることで考えてもらう余白を作る)
  • すでに話された関連ストーリーを引用する(同じ収録で、すでにゲストが述べたキーワードや核となるストーリーがあれば、改めて引用することで深みを持たせることもできる)
  • 第三者の意見を引用する(同じトピックに対して書かれた本の要約や、有名な言葉を引用したりすることで、参照してもらえるフックを増やす)

心理的安全なスペースを作る

これは、僕が今一番気を付けていること。かつ、なかなかうまくできていないので、最優先で模索していることでもある。ゲストの方が、気持ちよく話せて、過度の心配や緊張をすることなく、快適に話す環境をいかに作れるのか。

現時点では、以下の点を気を付けている。

  • 編集可能であることを事前に伝える(もし収録中に口が滑ってしまっても、それが自分の知らないうちに公開されることはない)
  • 起こりうるネットワークトラブルについて伝える(もし収録中にネットワークが中断されてしまったとしても、なるべく焦らなくて良いと理解してもらう)
  • NG ワードや話したくないストーリーについては深掘りしない(誰だって、触れてほしくない話や不快なトピックはあるはず)
  • 収録環境をストレスフリーにする(Zencastr のような収録プラットフォームに課金している。ゲストの観点からすると、収録部屋に入るだけで良い。特別なソフトウェアをインストールしたりする必要がない)

Opportunity for Autonomy

こちらが用意した台本や筋書きに沿って話してもらうだけだと、無味乾燥でつまらない収録となってしまうし、自分たちの考えられる範囲に閉じた創造性の低い収録となってしまう。ゲスト収録の醍醐味は、ゲストの力を借りて、自分たちだけで収録できるレベルに到達できる点にある。

だから、ゲストが自律的に企画を持ち込んでくれたり、ゲストが自由に発信できる場を提供することも大事だと信じている。

  • ゲストによる持ち込み企画
  • ゲストからホストへの持ち込み質問
  • ゲストによる最後の宣伝・自由コーナー
  • ゲストによる Podcast や Bookclub 運営自体への提案

具体と抽象の交差

事実の羅列だけだったら、誰にでもできる。それこそ、ゲスト自身が自分の Podcast を立ち上げて話すことだってできる。それではなぜ僕らの Podcast に来てもらえるのか。ゲストに何を提供できるのか。

その答えの一つとなる鍵は、対話を通じた新しい価値の発見や言語化による議論の深化だと信じている。1 + 1 = 3 を実現するために、僕らの収録に来たからこそ、面白い話をしてもらえるためには、何ができるのか。

その方法の一つが、具体的な話と抽象的な話を行き来することだと最近実感している。

例えば、ゲストのキャリア遍歴を時系列で話してもらうとしよう。まずは、事実を深掘りする。何年に、どこで、何をしたのか。その過程で、ゲストが自己学習を通じて特定の技術領域に詳しくなったというストーリーが出てくるとする。ここまでは「具体」だ。

そこで、「抽象」にギアを変える。この例では、例えば「ソフトウェアエンジニアの技術習得における学習の意義」というトピックに話を広げてみる。

「ここで少し聞いてみたいことがあります。自分のキャリアの節目に、メンターのような重要な人物がいたということが今のストーリーを聞いてとても伝わりました。これを踏まえてなのですが、自分にとって新しい技術を学習する時に、メンターのような存在は必要だと思いますか?Self-Learning だけで、ある程度の技術水準まで到達できると思いますか?」

こういったときに、ゲストの経験や、半生、哲学が垣間見えてくる。普段考えていることが、染み出してくる。リスナーにとっても、ゲストの経験から何か学びを抽出してもらえる、とても面白い瞬間だ。

難しいのは、抽象にギアを入れ続けると、話にまとまりがなくなって説得力が無くなってしまうことだ。また、抽象的な話ばかりしていると、話しているゲストも聞いているリスナーも疲れてきてしまう可能性もある。だからこそ、具体にギアを戻す必要がある。具体的な経験に立脚した抽象の話ほど説得力のあるストーリーはない。

No Assertion / No Labeling

Podcast の収録に限らず、新しい人と出会うシチュエーションにおいて、人は話している相手の属性によって偏見を持ってしまうことがある。ゲストを迎え入れる際に、「30代ソフトウェアエンジニアだからガジェット好き」だとか「イギリス在住だから紅茶とスコーンが好き」だ、みたいな先入観を持たないようにしている。

マインドセットとして気をつけることしかできない。どうしたら構造的にラベリングを避けられるかは、まだわかっていない。しかし、これを意識して収録に臨むかどうかで、収録の質は大分変わってくる。先入観を持って他人をラベリングしてしまうと、それにそぐわない情報を自然と無視してしまう。そうすると、自分が見たいものしか見なくなってしまう。

だから、ゲストの方が本領を発揮してもらうために、先入観を捨てる必要がある。

Keep Learning

最後に。Podcast を続けるに従って、ありがたいことに多種多様なゲストの方に来ていただけるようになった。だからこそ、話の引き出しを広げていくためにも、自分自身が学び続ける必要がある。

今まで知らなかった世界に興味を持ち、それまで遠ざけていた領域に足を踏み入れ、優先度を下げていた書籍を本棚から引っ張り出して読み、過去に学んだ知識を見直し評価する必要がある。

自分自身が学び続ける。何よりも大事なことがあるとしたら、これに尽きると思う。

2024-11-09