Radical Open-Mindness for Better Decision Making

今日は、より良い意思決定をするために意識している "Radical Open-Mindness" について紹介したい。

契機

先日、ソフトウェアエンジニアの友人から、キャリアにおける学習指針について相談を受けた。詳細は割愛するが、「次に何を勉強するか」について悩んでいる状態で、他人からのフィードバックを受けて自分なりの答えをすでに出していた。その答えについてフィードバックをくれないか、という話だった。

僕も日々同じような悩みを抱えているので、まずはどのような課題を感じているのか、詳しく聞いてみた。そして、自分なりの解決策を出すに至った思考過程も聞いてみた。チャット上での非同期コミュニケーションだったので、汲み取れていない感情や見逃している前提もあったかもしれないが、僕が過去に失敗したのと全く同じパターンでの意思決定をしていることに気づいた。

一言で言うと "Blind Spots" を見逃している状態。せっかくの機会なので、一緒に本当の課題と今立ち向かうべき解決策を言語化する手伝いをさせてもらった。貴重な学びであったので、忘れないうちに筆を取っておこう。

Blind Spots

Blind Spots とは、その名の通り「盲点」である。意思決定の過程において、この Blind Spots は必ず立ち向かうべき敵である。

Blind Spots は、あらゆる形に変化して襲ってくる。バイアスや偏見によって判断を鈍らせてくる。エゴや内なる衝動・欲求によって盲点をついてくるケースもある。単純に情報が足りていない場合もある。傲慢さや自分の意思決定スキルへの過剰な信頼によって間違いを犯すこともある。情報が足りていても、論理的思考力不足やスキル不足によって判断を誤ることもある。

バイアスひとつとっても様々なパターンがある。

  • Anchoring effect
  • Availability heuristic
  • Confirmation bias
  • Conjunction fallacy
  • Halo effect
  • Loss aversion
  • Recency bias
  • Sunk cost

Blind Spots を倒し切らないうちに結論に急いでしまうと、間違った解決策を選んでしまう可能性がある。間違った解決策に努力を重ねると、Sunk cost も相まって、必要以上に本来解決すべきであった課題から離れてしまうリスクがある。

例えば、転職活動においてコーディングテストで落ちたとしよう。本来の課題は「データ構造とアルゴリズムをコーディングで実装するハードスキル」であったと仮定する。しかし、あらゆる Blind Spots によって、誤った結論に急いでしまうパターンはいくらでも考えられる:

Wrong hypothesis Wrong solution
ソフトスキルが足りていなかったのではないか Public Speaking の本を読む
ロジカルシンキングが足りていなかったのではないか フェルミ推定のトレーニングを受ける
英語力が足りていなかったのではないか 外国語学習アプリに課金する
インタビュアーの目が肥えていないのではないか 他人のせいにして八つ当たりする

さて、どのように Blind Spots と向き合っていけば良いのだろうか。

How to spot your Blind Spots

Blind Spots を冷静に発見・評価できるためのマインドセットとして、Ray Dalio が "Principles" で提唱した Radical Open-Mindness という考え方がある。

if you can recognize that you have blind spots and open-mindedly consider the possibility that others might see something better than you - and that the threats and opportunities they are trying to point out really exist - you are more likely to make good decisions. - "Principles" p.187

彼の提唱したオリジナルのコンセプトを理解するためにはぜひ本書を手に取って欲しいのだが、僕なりの解釈を踏まえた上で、いかに Blind Spots を発見し、より良い意思決定を行うかについてのアイデアを共有する。

1. Recognization - "Where are my blind spots?"

第一のステップは、Blind Spots がありうる、という可能性を理解すること。この時 Radical Open-Mindness が活きてくる。

自分の結論は間違っているのではないか。自分の知識は不足しているのではないか。何か大事なことを見逃しているのではないか。そう無意識に思って結論を実行する前に立ち止まる人は多いはず。

まずは、Blind Spots の可能性に立ち止まること。これが第一歩。

2. Articulation - "What are my blind spots?"

第二のステップは、その Blind Spots を実際に言語化していくプロセス。その人のパーソナリティや状況によって、Blind Spots は何にでもなりうる。

感情で物事を考える性格の人は、まずその意思決定においてどれくらい感情が入り込んでしまっているかを言語化する。どのような感情によって自分が突き動かされているのかを自分に問う。悲しい?寂しい?嬉しい?興奮している?まずは、感情を言語化する必要がある。

他人からのフィードバックを過度に意思決定に反映させすぎてしまっているケースもあるかもしれない。マネージャーや医師のような権威のある人からの意見を必要以上に重要視してしまうのは、バイアスの影響だ。まず、そこにバイアスがあるという事実を記述すること。

自分にとっての Blind Spots が何なのかを言語化すること。それが二つ目のステップ。

3. Elimination - "How to get rid of my blind spots?"

言語化できて初めて、Blind Spots を対処しにいくことができる。

ここで大事なのは、Blind Spots を潰しにいくようなシステムを作ること。感情の起伏やバイアスによって判断が鈍るのは人間の性。そこに流されないように、習慣によって Blind Spots を冷静に対処できる環境を創る。

僕の場合は、例えば Journaling。日記を書くことで、冷静に自分の感情を吐露することができる。朝の5分間の瞑想も、習慣の一つ。ランニングやダンス、筋トレのような運動を挟むことで、感情の沈静化をはかるのも、自分が重要な意思決定に向き合うための環境づくり。

準備ができてからはじめて、重要な意思決定に向かう。急がば、回れ。

4. Decision Making

Blind Spots がある状態での意思決定と、Radical Open-Mindness のマインドセットを獲得した状態での意思決定を可視化してみた。

Radical Open-Mindness for Better Decision Making

大事なポイントは、このタイミングでようやく初めて、ロジカルシンキングのようなハードスキルや、メンタルモデルのようなフレームワークが活用できる、ということ。意思決定のプロセスにおいて、まず Blind Spots を意識しないと、不足した情報や中途半端な可能性の中で狭まった結論に急いでしまう。意思決定のフレームワークを使う前に、膿を出し切らないといけない。

Last Words

冒頭で紹介した友人の場合、そもそも結論に急ぐ段階で他人に相談できた、というのが大きかったように思う。他人に相談することで自分の Blind Spots を見つけ出す、という作業を無意識に行なっている人も多いだろう。メンタリングやコーチングを活用することで、意識的に第三者目線を意思決定に含めるようなシステムを構築している人もいるだろう。

ここで何よりも大事なのは、誰に相談するか、ということだ。相談した相手が、例えば意識的・無意識的に何かを宣伝・誇示したいようなタイプの人間だった場合、自分の Blind Spots を悪用してくるケースがある。これを意識的に行なっている人は流石に稀だが、無意識的に行なっている人はそこそこいると感じる。

だから、他人に相談するという手法で Blind Spots を潰すときは、Second-Opinion をぜひ取りに行ってほしい。僕も必ず相談を受けた時には「あくまで僕のやり方を参考として紹介します。おすすめではありません」という言葉を付け加えるようにしている。他人からのフィードバックを受けることで、かえって Blind Spots が色濃くなってしまうケースがある。

相談する相手が、Blind Spots や Radical Open-Mindness を理解しており、かつそれを悪用しないことが信頼できる場合は、最強の相談相手になるのだが、そういった人を探せなくて苦労している人は、たくさんいる。

2024-10-13