こんにちは。英国在住で Software Engineer をしてる Ken Wagatsuma です。この記事では、私が採用側や海外転職、他の方々の履歴書を添削する経験を通じて感じた、英文履歴書のよくある「間違い」について考察しています。
海外転職を目指している方向けに、英文履歴書の添削や技術面談の練習相手を行なっているのですが、英文履歴書を添削する際によく見かける「間違い」があります。
それは、「必要以上に情報を書き込みすぎる」ケースです。
相手に情報を伝えたいあまり、今までの経験を全て詰め込んだり、少しでも業務で触ったことのあるスキルを全て詰め込んだり、不要な情報までも詰め込んでしまいます。
ここで大事なのは、「インタビューをする側の目線に立ってみる」 という点です。面談をしたことがない場合は想像をするのが難しいのですが、殆どのリクルーターは限られた時間の中で何百枚もの履歴書に目を通す必要があります。
一枚の履歴書あたりに目を通す時間は「30 秒」とも「10 秒」 とも言われています。インタビューをしてきた経験としても、肌感覚と合っています。
以下はよく見かける「不要」な項目の例です。
リクルーターが住所を使うことはあるでしょうか?全くありません。むしろ不必要に個人情報を露出させてしまっています。セキュリティに対する意識も疑われてしまうかもしれません。相手に求められない限り(殆どないと思いますが)住所を書くのは避けましょう。
もちろん、国や都市レベルであれば構いません。むしろ、グローバル企業に申し込む場合はどこのオフィスで採用することになるのか知る必要があるので、"Tokyo, Japan" や "London, UK" であれば書いておいても良いでしょう。
同様に、高校時代の学歴も必要とされることは殆どありません。思い切って削除してみましょう。もちろん、最終学歴が高校で、何らかの理由で求められる場合は例外です。
そのほかによくあるのが、同じ情報を別の箇所に記載してしまっているケースです。
例えば、ヘッダーに「Github: https://github.com/kenju」のようなリンクを貼ってあるのにもかかわらず、「外部リンク」のような項目において同じリンクを書いてしまう、といったケースです。
貴重なスペースを使い果たしてしまうのは勿体無いので、重複された情報も思い切って削除してみましょう。
賛否両論あるかもしれませんが、趣味も不要です。
もちろん、採用する人のパーソナリティを知ることは重要です。週末にどのような過ごし方をするのか、同じ趣味を持つ人がチームに入れば話は弾むでしょう。
ただし、パーソナリティを伝えるのは履歴書の役目ではありません。その後の Hiring Manager との面談や、Behavioral Interview で問われます。その際に答えれば良いでしょう。
勤務先情報を詳細に書いてあるケースもあります。例えば、日本語の履歴書ですが、以下のような内容です。私の以前の履歴書からの抜粋です。
英文履歴書を書く場合、海外の外資系に申し込む場合が多いのですが、日本の有名企業でもグローバル市場では名が通っていないことが殆どです。そこで、「日本の大企業に勤めていた」「日本の東証第一部企業に勤めていた」ことをアピールしたいがために記載する必要があります。
しかし、その発想自体が誤りです。インタビューで問われるのはその人の資質と技術力、コミュニケーション力で合って、どの企業に働いていたかは重要でありません。ですので、そもそも名が通っていない企業を頑張ってアピールすることほど的外れなことはありません。
またよくある間違いが、「低評価につながる情報を積極的に書く」ようなケースです。もちろん嘘をついたり隠したりすることはもってのほかですが、例えばデータサイエンティストの職種に応募しているのに、デザイナーとして働いた経歴はおそらく不要でしょう。また、関係ない資格をリストアップする必要もないでしょう。
手厳しいかもしれませんが、まだまだ続きます。よくある間違いは、「あまり使ったことがないのに、業務で少し触っただけでリストアップされている技術」です。
Software Engineer が普段使う技術の進化は早いので、数年働けば自然と数々の技術に触れることになります。中には、大して本質を理解していないけれども業務で必要だったから見よう見まねで使っただけの技術もあるでしょう。
それ自体は全く悪いことではないのですが、履歴書にアピールポイントとして書いてくると話は別です。
本当にその技術はアピールポイントですか?その技術を知っている他の人と比較して差別化できるほど技術力を有していますか?
もし答えが No である場合は、思い切って削除して構いません。というのも、「できる」と言っている技術について技術面談で突っ込んでみると、実は大して解っていないことが判明し、そうした場合人の印象というのは単純なので不信感に繋がります。
そもそも使ったことのある技術リストが箇条書きで書かれていても、誰も読んでくれません。ただ貴重なスペースを占めるだけでしょう。
時々ボランティア実績を記載しているケースもあります。これも場合によりますが、不要なケースが多いです。
アピールにつながる場合としては、例えば「プログラミング教育のボランティアをしていた経験があり、関連職種に応募しているケース」です。この場合は明確なアピールになるのでぜひ記載したいです。
ですが、一般の Software Engineer の職種に応募している際に、ボーイスカウトやその他一般のボランティア実績は不要です。あなたの人柄の良さは通じるかもしれませんが、本当に人柄が良いのであれば、その後の面談で滲み出るように相手に伝わるはずです。思い切って削除しましょう。
目次も不要です。そもそも目次が必要ということは、履歴書が複数ページにまたがっているということです。全体構成から見直してみましょう。
長い履歴書が採用担当者に伝えていること、それは 優先順位づけができていないことの証拠」 に過ぎません。
自分が必要ない情報が延々と書かれている履歴書を見たとき、どう思うのか。相手目線で考えられていない証拠 に過ぎません。
業界標準のフォーマットや見た目ではない場合、どう評価されるのか。下準備ができない新人である証拠 と思われてしまう場合もあります。
厳しい言葉を書きましたが、実際のところ、競争主義に基づいた転職市場というのは厳しい側面もあります。ぜひ覚えておきましょう。
例えば、以下は経験年数とその時点での私の履歴書のページ数です。
year | page |
---|---|
2015 | 7 |
2017 | 5 |
2019 | 4 |
2021 | 2 |
2022 | 1 |
私も経験年数が少ない時は、「書くだけお得」と思って全ての経験、全てのスキルを書き込んでいました。
しかし、徐々に採用をする側や海外転職、他の方々の履歴書を添削する機会を通じて、何が不要で何が必要が見えてきました。履歴書が一枚になったのもごく最近です。
前回転職活動をしたときは一枚半(グラフでは二枚としてカウント)でしたが、この時は履歴書での手応えはかなり感じていました。
最後に、本当に「良い」履歴書とは何かについて、持論を述べさせてください。
履歴書とは、あなたのこれまでの仕事の経験をしっかりアピールする文書です。逆にいうと、仕事の経験こそが履歴書の本質 です。
良い履歴書を書くためには、「普段から良い仕事をし、仕事現場で周囲からの信頼を得る」というのが、遠回りに見えて一番の方法です。しっかりと評価を残せば、書くことも自ずと増えてきますし、体裁を整えるだけで済みます。
これは、私が特に経験がない頃に履歴書を書く中で痛感した事実です。経験が無いからこそ関係ないものを書いてしまう。そんな悪循環から抜け出すためには、時間をかけて職場で評価を出していく(もしくは職場以外の OSS やプロジェクトで成果を出していく)しかないのです。
結局、履歴書もコミュニケーションのツール。コミュニケーションとは、伝える「何か」があってこそ相手に想いが伝わるもの。私自身もその思いで普段の業務に励んでいきたいと、この記事を書きながら強く感じています。