Tight Channel, Right Funnel

なぜ、人は積ん読をしてしまうのか。なぜ、「あとで読む」ブックマークは増え続けるのか。なぜ、"Save for Later" は "Save for Never" になってしまうのか。なぜ、友人から教えてもらったオススメのレストランは結局訪れることなくリストに残り続けるのか。なのに、なぜ Amazon でレコメンドされたセール商品を衝動買いしてしまうのか。同じような後悔を繰り返してしまうのか。

この問題を、情報をインプットする Channel(チャネル) と、情報をアウトプットする Funnel(ファネル) という仕組みに分解した上で、考えてみよう。

Tight Channel, Right Funnel - Bad Example

Problem: Your Channel is Too Broad

第一の問題は、チャネルが広すぎることだ。

他人からお勧めされた、街中で広告を目にした、といっただけの理由でその情報や商品を取り入れようとしてしまう。そして、買ってから後悔する。購入を意思決定する前段階の敷居が低すぎるのだ。

この一見非合理にも見える行動の本質は、FOMO (Fear Of Missing Out) だ。みんながお勧めしている、だから見ないと自分だけが損した気になってしまう。流行に乗り遅れたくない。自分だけが取り残されたくない。話についていきたい。知ったかぶりをしたい。自分だけが知らないということで後ろ指を刺されたくない。だからと言って、チャネルを広げすぎて、結局どの情報も十分に吟味して消化できなければ、元も子もない。

Tight Channel

チャネルが広すぎるという第一の問題に対しては、チャネルを絞ろう (Tightening Channel)。インプットするリソースには、かなりのハイスタンダードを要求するということだ。

具体的な例をいくつか紹介する。

  • 信頼する友人の内、複数人が推薦して初めて読みたい本リストに加える
  • 第三者機関のレビューを必ずチェックし、事前に決めた基準を上回っていた場合にのみ商品を購入する
  • 「買いたいものリスト」に三ヶ月間まずは寝かせておき、期間が経った後も同じモチベーションを保持している場合にのみ商品を購入する
  • 試し読みや立ち読み、フリートライアルで必ず事前に試験運転をする
  • 事前に、そのリソースを読んで自分が何を得たいのかを言語化してノートに書く

アメリカの元大統領や、有名企業の CEO が「今年読む本リスト」を紹介しているのを見たことがあるだろう。たかだか数冊の本だ。時間が無いからこそ、読んで確実に何かを得られる本を読む。その数冊を吟味するために、かなりの時間をかけていることは想像に難くない。

また、チャネルを狭めた上での発展として、複数の段階でチャネルを取捨選択する、というのも有効だ。例えば、何か高価な商品を買うときには、「複数人の信頼する友人からのレビュー」だけでなく、「三ヶ月以上寝かしておく」プロセスを経て、さらに「その商品を購入することで得られる期待値を言語化」する、全ての諸条件が && でパスしたときにだけ商品を購入する。

Problem: Your Funnel is Too Narrow

第二の問題は、ファネルが狭すぎることだ。

どういうことか。それは、情報を吸収した後に、どうアウトプットするかが決まっていなかったり、曖昧であることということだ。それによって、情報を取り入れようとするモチベーションが持続しなかったり、情報を取り入れたとしても、それがどこにもいかないので、忘れて終わる、ということだ。

「本を読んだけど、結局何が言いたいのか分からなかった」であったり、「ブログ記事を読んだけど、何が買いてあるのか忘れてしまった」であったりしたら、黄色信号だ。せっかくの貴重な時間を使ってインプットするのだから、読んで忘れる、では勿体無い。

Right Funnel

ファネルが狭すぎる、という第二の問題に対しては、正しいファネルを決めよう (Right Funnel)。ファネルは多ければ良いということではない。情報を取捨選択してインプットする前に、どのようなアウトプットを期待するのかを、適切に言語化しよう、ということだ。

情報のアウトプットには、人によって様々な選択肢がある。

  • 日記や学習ノートに転記する
  • 同僚や友人に内容を要約して伝える
  • 社内のメールや情報共有サイトで発信する
  • ブッククラブで議論する
  • ブログを書いて公開する
  • Podcast で配信する
  • カンファレンスで発表する
  • 明日からの行動に活かす

自分がその本を読んだ後で、どのようなアウトプットに落とし込みたいか、事前に決めよう。そしてそのアウトプットのファネルが、正しいものかどうかを、適宜振り返ろう。

Tight Channel, Right Funnel

要するに、本にしろ、記事にしろ、Podcast にしろ、動画コンテンツにしろ、情報を取り入れ、きちんと消化し、自分の成長や環境の改善に繋げるためには、情報を処理する「前」と「後」の両方を工夫してあげる必要がある、ということだ。

Tight Channel, Right Funnel - Good Example

  • Tight Channel = 情報のインプットの量を減らす(情報を処理する「前」)
  • Right Funnel = 情報のアウトプットの質を高める(情報を処理した「後」)
2024-11-11