ドリップコーヒーを淹れるたびに捨てていたペーパーフィルター。その小さな積み重ねが、いつからか胸の奥にこっそり罪悪感を残していくようになった。いつのことだったかは、覚えていない。しかし確実に、日々の習慣が地球に負担をかけていくのだろうと想像すると、たとえどんなに小さい習慣でも、何か変えたいという思いが芽生えた。
そしてある日、僕は "Resulable Coffee Filter" という文字を検索ボックスに入力し、ペーパーフィルターに取って代わる新しい相棒を探し始めた。大手通販サイトではなかなか良いものが見つからない。しっくりくるものがない。そう諦めかけていた時、Etsy で出会った "Grassworks" の Reusable Organic 100% Hemp Fabric Coffee Filter が、見つけられるのを待っていたかのように目に留まった。それが僕に新しい素敵な習慣を提供してくれることは、購入する前から運命のように確信した。
手に取った瞬間、そのシンプルで主張強くない、潔いデザインに心を奪われた。柔らかな麻の手触りと、素朴な色合い。真っ白ではない、ほのかなクリーム色。その無駄のないつくりが、まさに自然の理にかなったプロダクトだと感じさせてくれる。Grassworks は再利用可能な麻コーヒーフィルターを専門に手がけているブランドのようんだ。その情熱が一目で伝わる。
最初に使った日は少し緊張した。新しいものを扱う時の特有の慣れなさがつきまとい、安定したドリップコーヒーの味は出せなかった。しかし、実際に何度も試してみると、そのシンプルさに驚かされた。ペーパーフィルターの代わりにこの麻フィルターをセットし、いつも通り豆を挽き、湯を注ぐ。ただ、それだけだ。洗い流して乾かせば、何度でも使える。環境に優しいだけでなく、長期的には経済的でもある。使い捨ての代わりに再利用するという行為が、日常に小さな満足感をもたらした。僕の小さな罪悪感は、最後にペーパーフィルターを使ったあの日に、コーヒーの残り滓と共に捨ててくることができたようだ。
麻という素材が持つ特性も、僕を魅了した。耐久性が高く、繰り返しの使用に耐えることができる。そして自然素材特有の通気性が、コーヒーの抽出に絶妙なバランスをもたらしてくれる。紙のフィルターでは得られないような、豆そのものの豊かな風味が引き出される気がした。特に、オイル分が微かにカップに残ることで、コーヒーのボディ感がしっかりと感じられるようになった。
また、このフィルターは持ち運びにも便利だ。軽量でかさばらず、旅先でもお気に入りの一杯を楽しむための信頼できる道具となる。どこへ行くにも持ち歩ける小さなエコフレンドリーな相棒。それは、旅をしながら環境への配慮を忘れないというライフスタイルを象徴しているようだった。
もちろん、再利用可能なフィルターには洗浄という手間がついて回る。しかし、その時間さえも、今は愛おしいとさえ感じられる。洗いながらフィルターに付着したコーヒーの香りを感じる瞬間、それが一日のリズムの一部となる。小さな労力を惜しまないことで、自分と環境の両方に優しくなれるという実感がある。
Grassworks のフィルターを使い始めてから、コーヒーを淹れる時間が少しだけ違った意味を持つようになった。それはただの飲み物を作る行為ではなく、持続可能な選択を日常に取り入れるという意思表示でもある。一杯のコーヒーが、地球への配慮を忘れない選択肢に変わる。そんな新しい習慣が、僕の日々を少しずつ豊かにしてくれている。
再利用可能フィルターの存在は、小さなものかもしれない。しかし、それがもたらす影響は決して小さくない。再利用可能な道具を選ぶという一歩が、持続可能な未来への道筋となる。Grassworks のシンプルで誠実なデザインが、コーヒーを楽しむ時間に深みを与え、僕たちの日常の選択の意味を問いかけているようだった。