Uganda Bukonzo Dream -- その名を聞くだけで、心が遠くアフリカの空気に誘われる。イギリスのロースタリー Old Spike がこのコーヒーを手掛けたのは、きっと偶然の思いつきや気まぐれではないだろう。彼らのミッションである「社会的インパクトを通じたポジティブな変化」と、このコーヒーに込められた夢が自然と結びついたのだ。
このコーヒーの名前、「Bukonzo Dream」は、ウガンダとコンゴ民主共和国をまたぐルウェンゾリ山脈 (Rwenzururu) に住むバコンゾ族 (BaKonzo) に由来する。国境を超えたアイデンティティを持つ彼らは、どちらの国家にも完全に属さないが、自らのルーツに誇りを持つ。1962 年に独立を宣言してから、数々の衝突を経験しながら、革命を歴史で体現してきた。彼らの暮らしや文化、そしてコーヒーを世界に届けたいという Agri Evolve の夢が、この名前には込められている。
このコーヒーの特性を語るとき、「シンプル」という言葉がしばしば出てくる。それは決して、単調さという意味ではない。それはむしろ、洗練された透明感、その中に潜む味わいの奥深さを指している。標高 1500~1800m の高地で育ち、アラビカ種の中でも SL14 と SL28 という品種がもつ個性が、ナチュラルプロセスの製法を通じて最大限に引き出されている。
弾きたての豆の香りは、弾けるような爽やかな香り。カップを口に運ぶと、まず感じるのは熟した桃やマンゴーのようなトロピカルフルーツの香り。ひとくち含むと、その甘さの奥にキャラメルのような滑らかさが広がり、自然と頬が緩む。どのフレーバーも強調しすぎることなく、バランスよく溶け合っている。シンプルに、美味い。
このコーヒーを味わうたび、目の前に広がるカップの先にある風景を思い浮かべる。バコンゾ族の人々が山腹の農園でコーヒーチェリーを摘み取り、それを大地の力だけで乾燥させる。その過程を通して、彼らの生活と文化がこのコーヒーに刻み込まれているのだ。
Old Spike のロースタリーは、2014年の創業以来、ただ美味しいコーヒーを提供するだけでなく、その背後にある社会や環境への影響を重視している。この Bukonzo Dream を通じて、彼らはバコンゾ族の農家と消費者をつなぎ、新しい価値を生み出している。
一杯のコーヒーに込められた想いを知ると、日々の何気ない時間が少し特別に感じられる。カップから立ち上る香りを吸い込み、口の中に広がるフレーバーを味わいながら、遠く離れたルウェンゾリ山脈に思いを馳せる。それは単なる飲み物を超えた、小さな旅のような体験だ。
Uganda Bukonzo Dream は、ただのコーヒーではない。それは、土地の記憶、人々の誇り、そして未来への夢を運ぶメッセンジャーだ。僕がこの一杯を手にするとき、そこには確かに山々の風景や、バコンゾ族の人々の微笑み、そして Old Spike の思いが静かに流れ込んでいる。
僕たちが日々の中で楽しむコーヒーが、誰かの人生をつなぐ小さな糸になる。そんなことを考えながら、この一杯を味わうと、胸の奥が少しだけ温かくなる気がする。
Cofee Note | Details |
---|---|
Region | Rwenzururu, Uganda |
Process | Natural |
Roast level | City Roast (Light Roast) |
Taste | Tropical fruits, Cherry, Caramel |
Variety | SL28, SL14 |